大人になってからの性教育とは?心と身体の成長を考える
はじめに
大人の性教育の重要性
大人の性教育は、多くの人が子供時代に経験した性教育とは異なり、心と身体の成長を深く理解しする必要があります。現代社会においても、性教育の重要性は年齢を問わず必要とされていますが、特に大人になると多様性や性的健康、安全に関する知識がさらに求められます。性教育は、単に生殖機能や避妊方法を理解するだけでなく、性と心の発育のバランスを保つことが大切です。
日本では、性教育は悪いことの様に受け取られがちですが、性をなくして生命を存続させる事は不可能です。年齢に合った性の知識を得ることがとても重要です。
心と身体の成長のバランス
大人の性教育においては、心と身体の成長をバランス良く考えることが不可欠です。どちらかが未発達な状態であると、自身の健康やパートナーとの関係性に影響が出ることがあります。例えば、心の発達が追いついていない場合、性的な行動が原因で感情的なトラブルを引き起こす可能性があります。また、身体の変化や健康管理を疎かにすると、性的健康に問題が生じることも考えられます。性と心の発育をバランス良く促進することで、より健康的で充実した生活を送ることができます。
では、学校でも習う心と体の基本的な成長を見ていきましょう。
初潮に関しては、大抵の人が知っていますが、精通に関しては知らない人も多いと思います。精通は男子10歳前後に訪れる初めての射精になります。夢精であることがほとんどですが、刺激によって射精してしまうこともあります。
また男性は、70歳になっても精子を製造することが可能なため、老年期においても子どもを持つことが可能です。反対に女性は、既に決められた数の卵を持って生まれてくるので、卵に劣化が生じたり、更年期の時期になると卵の数が残り少なくなり、妊娠することができなくなります。
この様に、女性と男性では体のシステムが大きく異なります。
1. 心の成長
心と感情知性
大人の性教育において、心と感情知性は非常に大切です。性と心の発育はどちらかが未発達でも全体的なバランスが崩れやすくなります。感情知性とは、自分の感情を理解し適切に表現する能力を指しますが、これが発達することで他人との関係も円滑になります。特に大人になってからの性教育では、この感情知性を伸ばすことが、心と身体の両面で健康な生活を送る基盤となります。
自己認識と自己評価
自己認識とは、自分自身が何者であるかを理解することを指し、自己評価は自身の能力や価値をどう評価するかを意味します。大人の性教育では、自分の性格や感情、価値観を知ることが大切であり、自分自身を理解した上でコンプレックスや短所を受け入れ、こういった自己認識を持つことで、自分に自信を持ち、他者と健全な関係を築くことができます。これは、性教育を通じて得られる非常に貴重な成長要素です。
男女関係だけではなく、あらゆる人間関係において重要なプロセスと言えます。
関係性の構築
健全な人間関係を築くことは、性教育の重要な一環です。特に大人になってからの性教育では、男女間の関係性や友情、職場での人間関係まで、さまざまなコミュニケーションスキルが必要です。多様性を理解し、尊重する姿勢を持つことで、調和のとれた関係性を築けます。法務省の調査でも、人間関係のトラブルが多くの社会問題を引き起こしていることが明らかになっており、性教育を通じて関係性の構築能力を養うことは、現代社会で非常に重要です。
女性と男性では、脳やホルモン、体のシステムが違うため、同じ人間であっても根本的に物事の考え方や認識が異なる場合があります。こういった男女の違いは、何度か恋愛を重ねる事で理解を深め受け入れていくことが大切です。
男性脳と女性脳の違いについては、次回の記事で書いてみようと思います。
2. 身体の成長
身体の健康管理
大人の性教育において、身体の健康管理はとても重要なテーマです。身体は年齢と共に変化し続けます。これには日常的な健康管理が欠かせません。バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠は基礎的な要素です。また、定期的な健康診断や性疾病の予防策を講じることも重要です。
特に女性は、性感染症に感染すると、将来的に妊娠できなくなってしまったり、ストレスや過度のダイエット、冷え、喫煙などによって不妊症を引き起こす場合もあります。
男性の場合も、喫煙や加齢、過度のアルコール摂取、肥満、ストレス、高温環境等で不妊症を発症する場合があり、精巣が温められると精子を作る働きが悪くなるということは一般的に知られています。
このように、将来的な家族計画を考えても、健全な性交渉を持つ事はとても重要だということが分かります。
生殖と生理の理解
生殖と生理の理解は、大人の性教育の中心的なテーマと言えるでしょう。これには男女双方の生殖機能や生理サイクルの基本的な知識が含まれます。男性・女性それぞれが持つ身体の機能を理解することで、自身やパートナーの身体の変化に対して適切に対応できます。また、避妊方法や妊娠の兆候、およびそれに伴う身体の変化についての知識も必要です。性教育を通じてこれらの知識を深めることは、性に対する健全な理解とリスペクトを育むことに繋がります。
又、女性は、常に受け身であり、無計画に妊娠してしまうと今後の人生が大きく変わってしまいます。そのため、避妊の要求をはっきりと伝えられる立場でいることが大切です。
「避妊してほしいと伝えたら嫌われてしまうのではないか?」
「病気を疑っている様で相手に失礼なのではないか?」
「最高のセックスを提供しなければ男性が離れていってしまうのではないか?」
などと考えてしまう事は、性と心のバランスが取れていないことになります。
避妊したから離れていってしまう様な相手とは、長く続く事はありません。男性も女性もお互いをリスペクトできる気持ちが大切です。
身体の変化への対応
成人になっても身体は変化し続けます。特に女性は月経周期や妊娠、更年期など、様々なライフステージで身体の変化を経験します。これに対して正しい知識を持ち、適切に対応することが求められます。たとえば出産後は、体が元の状態に戻ろうとしてホルモンバランスが大きく変わります。出産後の女性の体は母親としての任務を果たそうと、体や思考に変化をもたらします。こういった時期にパートナーとのすれ違いが生じてしまうこともあります。更に、女性は更年期になるとエストロゲンが減少し、ホルモンバランスに乱れが生じます。更年期になると膣が乾燥しやすくなり、性交痛が生じたり、のぼせ、不眠、動悸、イライラなどの症状が現れることがあります。
パートナーは女性のライフステージでの体の変化を理解し、積極的に子育てに参加したり、相手を敬う気持ちを忘れずに接しましょう。
又、男性も加齢やストレスによってホルモンバランスの変化を経験することがあり、対応方法も知識として持っておくことが大切です。更年期障害は女性だけではなく男性にも起こります。男性ホルモンであるテストロゲンが減少することで、めまい、動悸、イライラ、性欲の減退、筋肉の低下などの症状が現れます。
女性も男性も、これらの理解と対策を通じて、お互いに心と身体の健康を両立させ、健全な日常生活を送ることができます。
月経にまつわるさまざまな病気
①月経不順:急激なダイエットやストレスによるホルモンバランスの崩れ、悩みや不規則な生活によって月経リズムが乱れます。また、子宮や卵巣、甲状腺などの病気が原因となる場合もあります。
②月経困難症:月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質であるPG(プロスタグランジン)の分泌が多すぎるため、腹痛、腰痛、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などを引き起こす
③月経過多:ナプキンが1時間もたないほど経血量が多く、経血のなかにレバーのような血のかたまりがある。立ちくらみ、目眩を引き起こす場合がある。
④月経前症候群:月経が始まる3日~10日から、イライラ、のぼせ、下腹が張る、下腹痛、腰痛、頭が重い、頭痛、乳房の痛み、おこりっぽくなる。 落ち着かない、ゆううつになるなどの症状が現れる。原因はわかっていないが女性ホルモンが深く関与していると言われている。
⑤子宮内膜症:慢性的な腰痛や下腹部の痛み、排便時や性交時の痛みを伴います。原因は、月経血が腹腔内に逆流する現象(90%の女性でみられる生理的な現象)だと言われています。
⑥子宮筋腫:過多月経、過長月経、月経痛、腹部腫瘤触知、貧血、さらには頻尿、排尿困難、便秘、腰痛などの症状を伴うこともあります。原因はわかっていませんが、こちらも女性ホルモンが深く関わっていると言われています。
⑦子宮腺筋症:激しい月経痛、過多月経や過多月経による貧血、骨盤痛などがみられます。原因は瘀血(おけつ)とされています。 瘀血は、冷えやストレスが関わっています
⑧卵巣腫瘍:妊娠・出産の経験がない人、初経が早かったり閉経が遅い、排卵回数が多いなどが原因で発症します。症状は、腹部膨満感、下腹部痛、頻尿などです。
⑨子宮頸がん:初期症状では自覚症状がありませんが、進行すると性行中の出血やおりものの増加などが見られます。
月経にまつわる病気は、これ以外にも沢山あります。子宮は命が育まれる臓器であり、とてもデリケートです。男性の皆さんは、女性の体に関する知識を高め、いたわることが大切です。
3. 性教育の実践
性の多様性を理解する
現代社会においては、性の多様性についての理解も必要です。大人の性教育では、性的指向や性同一性について正確な情報を理解し、偏見や誤解を解消することが求められます。これにより、心と身体の発育がより健全に進むとされています。特に、法務省が推進する多様性の尊重に基づいた社会の実現に向けた取り組みが重要視されます。
セクシャルマイノリティ
LGBT
- L:Lesbian(レズビアン)。女性の同性愛者
- G:Gay(ゲイ)。男性の同性愛者
- B:Bisexual(バイセクシャル)。男性、女性どちらも恋愛対象となる人
- T:Transgender(トランスジェンダー)。出生時の性と、心の性が一致しない・違和感を持ち続ける人
LGBTQ
- Questioning(クエスチョニング):自分の性を定義しない、模索中の人
- Queer(クィア):性別の枠組みにあてはまらない自己認識を持つ人
その他のセクシャリティ
- Agender(アジェンダー):「ジェンダーがない」自己認識を持つ人
- Asexual(アセクシャル):性的欲求を持たない、無性愛者
- Bigender(バイジェンダー):男性と女性、両性の性自認を持つ人
- Two-spirit(トゥースピリット):複数の性役割を生きる人
渋谷区や世田谷区がパートナーシップ制度を導入するなど、少しずつ同性カップルの権利を認める自治体も現れ始めてきています。
性的健康と安全
性的健康は、ただ病気がないことだけではなく、性的な関係における満足や快適さも含まれるため、大人の性教育ではこの視点を欠かすことはできません。定期的な健康チェックや避妊の方法についての知識、生殖に関わる基本的な理解や、コミュニケーション能力など、相手との信頼関係の構築は欠かせません。
女性側の避妊方法
男性側の避妊方法
4. 性教育の課題と未来
現代社会の課題
現代社会における性教育の課題は、性と心の発育バランスの未達成にあります。多くの人々が、心と身体の成長の両方を包括的に理解する機会を逃してきました。特に日本では、性教育の内容が他国に比べてかなり不足しているとの指摘があります。国際セクシュアリティ教育ガイダンスと比較すると、男女ともに性教育の内容が十分でないため、性に関する誤った情報や偏見が根強く残っています。
また、発達障害を持つ子供への性教育も重要な課題です。彼らの特性に合わせた性教育が行われていない現状が、後の大人の性教育の質に影響を与えています。法務省も性的多様性と権利の理解促進を進めているものの、具体的な教育現場での実践がまだまだ追いついていないのが現状です。
未来の性教育の方向性
未来の性教育の方向性として、より包括的で多様性を尊重したアプローチが求められます。性と心の発育をバランス良く促進するためには、学校や家庭の連携が不可欠です。大人の性教育もまた、継続的に学び続けられる環境を提供し、どちらかが未発達な状況を改善すると同時に、年齢にそぐわない情報から子どもたちを守る社会を築くことも今後の課題と言えるでしょう。
幼児期から段階的に性教育を進め、年齢や発達に合わせて内容を調整することが必要です。これには、避妊方法の説明や妊娠・出産の仕組み、生殖と性的機能についての知識を含めることが効果的です。
まとめ
大人の性教育の必要性の再確認
大人の性教育は、単に若年層向けのものとは異なり、心と身体の成長を包括的にサポートするものです。現代社会では、性と心の発育がどちらか一方に偏ることなく、バランス良く成長することが重要です。これは、男女問わず全ての人々にとって必要な知識と言えます。大人になってからも改めて性教育を受けることで、自分自身の体や心についてより深く理解し、適切にケアできるようになります。また、性的健康や多様性の理解が深まることで、他者との関係性も良好に築くことができます。
心と身体のバランスの重要性
心と身体のバランスは、充実した人生を送るために欠かせない要素です。性教育を通じて、自分の心と身体の変化に適切に対応する方法を学ぶことができます。特に大人になってからは、これらの知識が保健や健康管理の一環としても重要となります。性教育により、自分自身の感情知性を高めるだけでなく、他者との関係性にも良い影響を与えることができます。また、身体の健康管理や生殖機能についての深い理解は、未来の生き方にも大きなプラスとなると言えるでしょう。